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新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全国に一斉発令して3週間、現時点では宣言解除に足るだけの感染患者数の減少を認めないとして、先日約1か月の期間延長が政府からアナウンスされました。
感染者の増加による医療崩壊、自粛要請による経済の破綻などすぐには解決が図れない大きな問題が浮上しておりますが、未だ感染の長期化が予想され、感染の縮小と経済の両立が現時点での大きな課題となっています。今後、経済、社会活動の立て直しについての出口戦略に向けて政府は動き始めると思いますが、感染終息についての出口はまだ見えない様に感じます。
歯科医院におきましては、医療機関として、口腔の健康を損なわないように診療を継続して行っていく役割(必要性)があり、当初から、政府より基本的に自粛要請などは出ておりません。その中で、厚生労働省から新型コロナウイルス院内感染対策についての指針が出され、各都道府県歯科医師会などを通じて各病院、歯科診療所に通達がなされました。
通達の内容としましては、簡単にお伝えしますと、スタンダードプリコーション(標準的感染予防措置:後述)に加え、飛沫感染、接触感染に留意して、患者数の制限を行いながら診療にあたること、特に歯科用切削器具、超音波機器による飛沫感染が大きな問題であり、その対策を取るよう通達がされました。(後述部分あり)
その中で歯科診療行為によって、感染が起こりうるリスクは勿論ゼロではありません。
診療行為は数十分単位で、かなり近い距離で密接して診療を行う、いわゆる濃厚接触にあたり、また飛沫感染という歯科特有の感染の危険もあることから、普通に考えるとリスク(患者、医療従事者間双方において)としてはかなり高いと思われます。
しかし幸いにして現状では診療行為によって患者が感染したという報告はニュースなど様々な媒体から得られる情報として、未だ耳には入ってはきておりません。
このような状況下では、基本的事項を尊守したうえで、一定期間毎に中間中間で我々が行っていることに対しても検証を行っていき、その状況に応じた対応をスピーディーに行っていくことが大切です。我々も常にアンテナを立てながら、対応にあたっております。
そして患者さんは勿論のこと、当院のスタッフ、私自身も新型コロナウイルスの感染から守っていかなければいけません。
<スタンダードプリコーション>
そのようなリスクのある中で歯科診療行為によって目立った感染が起こっていない要因はどこにあるのでしょう?
先ず基本的に、歯科医院においてはスタンダードプリコーション(感染症の有無にかかわらず全ての患者を対象に、血液、体液、分泌物、損傷のある皮膚、粘膜は感染性病原体を含む可能性があるという原則に基づき、手指衛生や個人防護具の着用など感染リスクを減少させる予防策のこと=標準予防措置策)に基づき、患者および院内の感染対策は普段から十分に行っております。診療中のアルコールによる手指消毒、グローブ、マスクの着用、状況に応じたゴーグルの着用は基本です。
先ず、このスタンダードプリコーションが、感染のリスクをかなり減じていると考えます。
しかしそこから更に、今回の新型コロナウイルス感染の特徴を掴んだ対策が必要であるのです。前述の厚生労働省、歯科医師会より通達された通り、新型コロナウイルスの感染経路が「接触感染」と「飛沫感染」であることを考慮し、このような標準的院内感染予防を基に、当院における感染予防対策として追加したことを、ここからは書いていきたいと思います。
1<接触感染対策>
患者来院時(診察券などを出してもらう前に)、お会計終了後にアルコール手指消毒を行ってもらっていること。→これは新型コロナウイルスが手に触ったものから感染が起こる、いわゆる接触感染が経路になっていることによります。
受付待合室の閲覧物、共用物の使用制限、トイレ、洗口コーナー、受付ドアなどの接触感染のリスクのある部分の定期的なアルコール消毒も実施しております。
これは院内医療従事者が使用する医療機器のスイッチ、電話など、使用頻度の高い共用物についても同様であります。
その他、基本的なことではありますが、器具などを収容している棚のノブなどを患者の口腔内を触った手でグローブ着用のまま開けたりしないことなど、スタッフにも今まで以上に徹底するよう周知しております。
2<飛沫感染対策>
それから治療前に患者の体調のチェックを行った後、イソジンによる含嗽を行っていること。→これは歯科医院特有のリスクとしての、エアロゾル対策のためです。含嗽剤は、新型コロナウイルスを不活性化させる効果のあるものを選択しております。
エアロゾルとは、歯を削る機器である「タービン」や、歯石除去などに使用する「超音波」を使用した際に発生する「飛沫」のことで、この飛沫が空気中に浮遊し、感染のリスクが生じるといわれています。普段から行っていることでありますが、切削による飛沫を吸引する口腔内、口腔外バキュームを必ず使用しております。
またそれとは別に、エアロゾルに対し、「空間除菌」という概念で、次亜塩素酸水の噴霧器を設置し、対策を行っております。近々、オゾンによる空間除菌器を追加で設置する予定です。GW明けには術者はフェイスシールドも着用予定です。
3<3密の回避>
そして患者が待合室で密集するような状況を避けるための予約の制限を行っております。当院は全室個室になっている(各部屋には窓があり、窓は開けて換気を徹底している)ため、患者さんが来院したら待合室が混まないように、空いている診療室で待っていただくよう工夫し、患者さん同士が待合で密集しないように工夫しております。
これは、解釈が難しい部分もありますが、当日に予約外において、緊急性の乏しい歯石の除去や小さい虫歯の治療を行うことなどはやはり現状は処置を控える必要があります。
この3点を追加し、しっかりと実行することにより、院内の歯科診療において患者⇔医療従事者間で感染が起こるリスクをかなり下げられると考えました。
当院では歯科医師会からの通達、特別警戒区域で診療に従事している歯科医師からの情報、県内外の友人歯科医師からの情報、新聞、ニュース、ネットなど、幅広い情報を元に、よく検討した上で、このような追加の感染予防の実施を全国に緊急事態宣言が発令されると同時に開始しました。
4<院内クラスター発生予防対策>
そしてもう一点は、医療従事者が外部から院内に感染を持ち込み、院内医療従事者の間でクラスターが発生するパターンがあります。実は歯科医院で感染が確認されているパターンはこれが殆どのようです。
この対策として院内医療従事者の体調管理の徹底、特にスタッフの休憩場所での3密の回避、Dr.、スタッフの制服の消毒、会計処理後のスタッフの手指アルコール消毒の徹底など、医療従事者間で接触感染、飛沫感染が起こりうる部分を、院長である私も含め、スタッフにもよく理解してもらい、徹底的に回避するように対策を強化しております。
*(1<接触感染>の内容も含む)
緊急事態宣言が7都道府県に発令された当初は、歯科治療においても当該地域の歯科医師会などから、可及的に、緊急性の有する処置のみに限定して治療を行うことを考慮する旨の要請がでていたようですが、自粛期間が長期化してくると、治療を延期している部分に問題が出てきたり、なかなかそうはいかない状況もでてくるでしょう。先が見えないままの状態でいつまで治療を延期すればよいのか、そのように考えている歯科医師も少なからずいるはずです。
そのような経緯から、和歌山のように感染がある程度抑えられている地域では、尚更、治療の制限をつけることは得策ではないのではないかと感じていました。診療の範囲をどこまで制限するかについて、いろいろな情報や周囲の状況を確認し、最終的には和歌山県歯科医師会から緊急性の少ない治療の範囲について、最終的な判断は各個人の先生方の判断に任せるとの通達の旨を確認し、当院ではエアロゾル対策をしっかりととりながら、治療延期により状態の悪化が懸念されるような、虫歯、根管治療、歯周病治療、補綴治療は、現在継続している治療に関して継続して治療を行っていく方針としました。状態が安定しており、これから治療していこうとしているような治療においては、患者さんとお話しした上で、一旦延期しております。
メンテナンスについては、高齢者の方は感染した場合の死亡率が高いハイリスクの部類に入るため、状況をみながらメンテナンスの期間を延長するように調整しております。但し、義歯を装着されている方は義歯の調整が必要になることも多いので、定期的に来院していただくケースも多いように思います。逆にインプラントのメンテナンスの方は状態が安定しておりますので、このような患者さんから、患者さんご自身でメンテナンス期間延期の連絡がはいることも多く、患者数の制限に繋がっております。
インプラントなどの手術に関してはこの1か月は制限しておりましたが、5月下旬以降、感染状況をみながら、手術の予約を入れていきたいと考えております。その場合も、他の患者予約は入れずに、院内を貸し切り状態にして、手術を行っていくことを予定しております。
GW中日、5/4に政府から緊急事態宣言の1か月の延長についての声明が発表されました。この声明では、感染拡大のための施策について、感染縮小について、現状一定の効果は出ているが、その中で経済への打撃が深刻であり、向こう1か月間をその立て直しのため準備期間に充て、宣言の緩和、解除に向けて対策を立てていく。そして継続して感染予防を行っていく、としています。
これは、感染終息にはまだ時間を要するが、緊急時事態宣言解除という一旦の収束を図ったのち、その後も感染予防は続いていくということです。新たな感染拡大を抑えつつ、社会活動、経済活動を立て直していく。このように、ステージは暫くの間、いわゆるwith corona (コロナと共存していく)という方向性で進んでいくでしょう。
政府からも接触感染、飛沫感染を考慮した、3密を避ける「新しい生活様式」についての提案がなされています。
このような状況下でやはり最も大切になってくるのが、
今日書かせていただいた、「患者および院内感染対策」であると考えるのです。
with coronaの時代、この「患者および院内感染対策」をしっかりと実行し、感染を抑えつつ医療崩壊の抑制、社会経済活動を両立していく。その期間に、コロナ治療薬、ワクチンの開発が進み、あるいは集団免疫の獲得が進み、世界全体が感染終息に近づいていくことを願って止みません。
当院において少なからず感染のリスクを負いながら、患者の処置にあたってくれている当院の歯科衛生士2名、受付会計対応、院内感染予防関連用品などの管理を行ってくれている2名の歯科助手に感謝の意を述べるとともに、新型コロナウイルスの感染が起こらぬよう院内感染予防を継続していきたいと思います。それから3年間勤務してくれて、2月で退職、関東へ転居された歯科衛生士の健康を願っております。
そして最後に、通院されている患者様への新型コロナウイルス感染予防対策を、今後も徹底していくよう最大限の努力を行ってまいります。
それから、患者さんからのマスクの差し入れや、親戚からのアルコール系消毒類などの差し入れを頂いております。本当に感謝いたします。