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9/15(土)、16(日)の2日間、大阪 中之島の国際会議場で行われた、日本口腔インプラント学会に出席し、幾つかの講演を聴講してきました。
・「審美領域のインプラント治療の長期予後」
・「インプラント治療 高齢者にける外科的対応基準」
1高齢患者の歯科インプラント治療における考慮
2インプラント治療 高齢患者に対する口腔内科的留意点
3骨吸収抑制薬(BPs)を使用中の患者における口腔インプラント
・「垂直的な歯肉増大を目的としたインプラント体埋入時同時CTGに関する短期臨床評価」
その中でも今回は、「インプラント治療 高齢者にける外科的対応基準」に焦点を絞ってお伝えしようと思います。この発表は、今後のインプラント治療(特に治療が終わった後のメンテナンスの部分)において、重要な事柄がたくさん示されているように感じました。
1高齢患者の歯科インプラント治療における考慮
(共催 顎顔面インプラント学会)
高齢患者を治療する際、治療時の負担を軽くするために必要とされる、手術時、その後の補綴治療(歯の部分に当たる上部構造の設計)の注意事項についてプレゼンがありました。
手術時の注意事項、負担軽減事項として、
先ず、服用薬剤の入念なチェック。そして患者の術前の血液検査、術中のバイタルチェック(血圧、脈拍、など)、は、全身的に内科的疾患を有する高齢者の患者にとって、必要に応じて行うことが大切です。
その他に、口腔内特有の事項として、術中のドリルからの注水に対する吸引があります。これは、ドリルで骨にホールを形成する際、発熱がおこるため、注水しながら、ドリイングを行うわけです。高齢者は嚥下機能が低下しているため、吸引が不十分であると、誤嚥性肺炎などを起こしやすくなります。その吸引器具やテクニックなどの紹介について。
そして、次に治療期間。これは私も4年前より行っている、即時荷重治療(インプラント埋入と同時に仮歯を装着し、ある程度咬めるようにする)により、治療期間短縮に寄与します。
また、大掛かりな骨移植など、侵襲の高い骨移植などは避け、出来るだけ患者自身の既存の骨の中にインプラントを埋入する治療計画を立てるなどの配慮が患者にとっても負担の軽減につながるでしょう。
そして、患者が寝たきりになり、介護が必要になるような場合は、インプラントの清掃も十分できなくなることが予想されるため、固定制の上部構造を一旦外し、インプラントにキャップを被せた上で、患者自身(あるいは介護者)が着脱が可能で、清掃が容易な義歯(いれ歯)に移行するなどの工夫が有効であることを述べられていました。
*(1は、市川総合病院時代の先輩、木津康博先生の講演でした。)
2インプラント治療 高齢患者に対する口腔内科的留意点
超高齢化社会に突入した現在、高齢患者に施工されたインプラント症例を診る機会が増加しています。それに伴って、全身的背景を考 慮した様々な口腔疾患を口腔内科的に診断する目が従来にもまして、必要とされてきております。
次に、インプラント周囲組織について。
主なインプラント周囲組織は、上皮、骨、骨髄であるが、特に上皮組織は癌化する可能性があり、インプラント周囲組織にも悪性腫瘍は発生しうるため、そのような場合は、早急な対応を行う必要があります。それらの診断に必要な知識を整理するために、前癌病変などの潜在性悪性疾患について、症例を交えながら解説がなされました。
*(これは、いわゆる口腔粘膜疾患といわれるもので、これらの疾患の扱いを専門的に行うオーラルメディシン(口腔内科)を標榜する東京歯科大学市川総合病で歯科医師のキャリアをスタートさせた私にとっては、この分野は得意とするところでもあります。)
また、インプラントを既に受けられている患者で、全身において他の部位に発生した悪性腫瘍(いわゆる癌)の治療を受けられる患者も少なくはありません。抗がん剤や放射線治療が施行された患者のインプラント周囲組織に対し、どのような影響を与えるか、認識する必要があります。
また、複数の慢性疾患を有し、多剤併用の副作用として、唾液の分泌抑制による口腔乾燥(口の中が乾くと口腔内細菌の増加や口腔内粘膜にカンジダ症などのいわゆる粘膜疾患の発症に関与します)が起こり易くなるほか、抗うつ薬とインプラント治療の関係性についても言及されていました。
(岩手田医科大学 口腔外科学分野
宮元郁也 先生講演)
3骨吸収抑制薬(BPs)を使用中の患者における口腔インプラント
近年、加齢に伴う体力の低下により、転倒などによる身体の骨折のリスク回避から、骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート薬(BPs)を処方されている患者が増加傾向にあります。
この薬剤の重大な副作用の一つとして、難治性の骨露出を伴うBRONJ(口腔内顎骨壊死)の発症が挙げられます。以前は、それらの副作用の発現は、骨へ転移した悪性腫瘍の骨病変に対し、高用量のBPs注射薬に限定されていると考えられていましたが、骨粗鬆症に対する低用量BPsでもこの副作用が発症することが明らかとなってきました。(骨粗鬆においても、高用量の注射薬を使用する場合もある)
さらに、BPsとは異なる作用機序で骨吸収抑制作用を示す、抗RANKL抗体薬denosumabでも同様の顎骨壊死が発症することから、現在(2017年)では骨吸収関連顎骨壊死(ARONJ)との呼称に変更されました。本邦では近年、当疾患の患者数が以前よりも10倍以上に増加しているという報告があります。
従来、この骨吸収抑制薬を使用中の患者に対しては、インプラント手術も含め、顎骨への外科的侵襲を、できるだけ回避することが推奨されてきましたが、外科的処置を行っていないにも関わらず、慢性炎症の原因となる歯周炎に罹患した歯に隣接して、このARONJが発症することも少なくありません。
このことから、骨吸収抑制薬を服用中であってもARONJを予防するために、抜歯(外科的処置)を検討するべきであるとの見解が示されていました。
手術時のみならず、インプラント治療後に、インプラント周囲炎などの慢性炎症が起こっている部位に対して継発する、この顎骨壊死の副作用への予防が急務であります。
要は、手術時だけではなくて、慢性炎症が存在すると、そこから顎骨壊死が起こる可能性がありますよ、ていう話です。
それには、日常の患者自身のブラッシング、医療サイドで行う専門的クリーニングが大切であることは言うまでもありません。
(兵庫医科大学歯科口腔外科学講座
岸元裕充先生 講演)
インプラント治療は咬合の回復、崩壊の抑制、審美性の回復などの点において、従来の治療と比較しても、多くの優れた点があることに異論はないはずですが、その一方で、超高齢社会に入った現在、それらがを長期的に維持させ、経過観察を続けていくためには、このような視点を有しておく必要が出てきていることは、見識のあるインプラント治療従事者であれば、これもまた異論のないところでしょう。
歯科は医科のインターン制度のように、基礎的研修がいまだ、国の定める研修のカリキュラムに組み込まれているとは言い難い面があります。ですので、私は常々、口腔外科での研修を最低でも1年間は行うべきであると考えております。(私は学生の臨床実習の頃からそのように考えていたこともあり、1年間の、一般の医科研修も含めて卒後4年間、口腔外科に従事しております。)
そのような研修を受けている者でさえ、年々進化してゆく医療に追従するよう、知識や技術をアップデートさせていかなければなりません。
これらの講演ではなされている内容は、インプラント治療の光と影の部分でいうと、これはまさに、影の部分であるかと思いますが、これらの問題を認識し、必要性が生じた場合には、しかるべき対応を適切に行っていく必要があるわけです。
我々、インプラント治療に従事する歯科医師は、インプラント治療の治療効果(審美性や咬合の回復など)ばかりに目を向けるのではなく、インプラントそのものが、生体にとって異物であることを考えると、それらが長期的に安定しているか、周囲組織がインプラントに対し、どのように反応しているのか、また、全身的に為害作用を及ぼしていないかなど、注意深く観察しながら、定期的メンテナンスを行っていく必要性があることを、これらの発表が示唆しているように感じました。
「攻めと守り」 といったところでしょうか。。
今後も、襟元を正し、患者様に対して施術をさせて頂いた責任というものを念頭に置きながら、メンテナンスの必要性、重要性をしっかりと患者に説明し、継続してメンテナンスを行っていきたいと考えます。そういったことを改めて再確認させられた、このセッションは凄く意義のあるものだったと思います。
That’s Oral Medicine !!
Nobel Biokare のブースで、映え(ばえ)スポット発見!!
記念撮影を行いました、、((´∀`) ☆☆
よくこんなの、作ったもんですよ~、まあ、撮る人も撮る人ですけどね~ 笑
画像、横にしときます。。